◎ポーランド、ブロフフ
ショパンが洗礼を受けた聖ロフ教会

1810年4月23日、フレデリック・ショパンは、生家のあるジェラゾヴァ・ヴォラから北へ約10キロメートルに位置するブロフフの聖ロフ教会にて洗礼を受けている。この教会は、1806年にショパンの両親が結婚式を挙げ、1832年には姉ルドヴィカも同じくこの場で婚礼を執り行うなど、ショパン一家にとって深い縁をもつ場所である。

祭壇の手前には、ショパンが実際に洗礼を受けたとされる洗礼盤が今なお大切に保存されている。洗礼の際、代父を務めたのはスカルベク家の長男フレデリックであり、ショパンの名はこの人物にちなんで名付けられた。
内部は円形や正方形の格子模様で装飾された樽型の丸天井が特徴であり、ショパンの生誕200周年を記念して行われた修復工事により、その姿が蘇った。
毎年7月および8月の日曜日の午後には、教会内でショパンの作品が演奏されるコンサートが開かれ、彼の原点ともいえるこの場所で、静謐な音楽のひとときを楽しむことができる。

ショパンの誕生日の謎
ショパンの生年月日については、三つの説が存在する。現在では1810年3月1日生まれという説が広く受け入れられているが、聖ロフ教会の洗礼記録には1810年2月22日と記されており、ショパンの心臓が納められているワルシャワの聖十字架教会の碑文にも同様の日付が刻まれている。
第三の説は、さらに遡って1809年3月1日とするものであり、これはショパンの幼少期の作品に記された日付や年齢、当時の書簡など多くの資料をもとに考証されたものである。どの説が真実であるかはいまだに明らかにされていないが、洗礼記録に「1810年」とあること、そしてショパン自身が「3月1日」と語っていたことから、現在では1810年3月1日を公式な誕生日とするのが通例となっている。